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GPS捜査:令状なし違法 「捜査、人権侵害」大阪地裁判断

毎日新聞 2015年06月05日 東京夕刊

 大阪府警が窃盗事件の容疑者の行動を確認するため、裁判所の令状なしに車両にGPS(全地球測位システム)の発信器を付けて得た証拠について、大阪地裁(長瀬敬昭裁判長)は5日の公判で、「車両使用者のプライバシーを大きく侵害するもので、(令状が必要な)強制処分に当たる」として違法と判断、証拠採用しない決定をした。GPS捜査を違法とする司法の判断は初めてとみられる。【三上健太郎】

 GPS捜査を巡っては、刑事訴訟法には規定がないため、各地の警察は、警察庁が2006年に基準を定めた内規を運用している。今回の地裁判断は、今後の捜査に影響を与える可能性もある。

 大阪地裁では今年1月、別の裁判長が同じ窃盗事件の別の被告に対するGPS捜査について適法としており、判断が分かれた。

 今回は、窃盗や建造物侵入などの罪に問われた大阪府門真市の無職、岩切勝志被告(43)の公判。12年2月〜13年10月、他の3人と共謀するなどし、郵便局で収入印紙を盗んだなどとして、計10件の罪で起訴された。公判ですべての起訴内容を認めている。

 府警は13年5〜12月、捜査のため、被告らの車やバイク計19台にGPSの発信器を無断で取り付けた。GPS端末は黒いケースに入れて車の下部などに磁石で取り付けられていた。

 捜査員が携帯電話で接続すると、画面上におおまかな所在地が表示された。電波が良好なら、誤差は数十メートルにとどまった。捜査員はこれを見て、被告らの行動を確認していた。

 長瀬裁判長は、このGPS捜査について、目視のみの捜査とは異質で、任意捜査と結論づけられるものではなく、「対象者のプライバシーを大きく侵害し、強制処分に当たる」と指摘。令状なしに実施した場合は違法と判断した。

 また、広域窃盗事件を対象にした今回の捜査内容に照らすと、「GPS捜査について相当程度、令状が発付された可能性が十分にあったのに、これを怠った。警察官の令状主義軽視のあらわれだ」と厳しく批判した。

 そのうえで、長瀬裁判長は、検察側が証拠提出した捜査報告書について、証拠能力を否定した。判決は7月10日。

 GPS捜査を巡っては、被告と共謀したとされる男(36)の公判で、別の裁判長は1月、「尾行のための補助手段としてGPSを使い、位置情報も記録として蓄積していない」とし、プライバシー侵害の程度は大きくないと指摘、適法と判断した。GPSで得た資料を証拠として採用し、3月の判決では男に懲役4年(求刑・懲役5年)の実刑を言い渡した。

◇1月には適法判断も

 大阪地裁が、裁判所の令状なしにGPS(全地球測位システム)を利用して作成した証拠を不採用としたことを受け、警察当局に戸惑いが広がっている。令状なしにGPSを使った捜査を適法とした過去の司法判断もあるほか、民事裁判ではプライバシーの侵害を巡って争われている。

 警察庁幹部は5日「まだ地裁の決定内容を聞いていない。法律論であり、具体的にどういう理由で(証拠)採用されなかったかを精査しないとコメントできない」と話した。

 犯罪捜査でのGPS利用を巡っては、警察は連続窃盗事件などで捜査対象者の車に端末を設置するなどして活用している。警察庁は2006年、使用する際の一定の条件などを定め、都道府県警に通知している。条件は公表されていないが、別の警察幹部は「容疑性の高さを考えて速やかな解決が求められる場合で、他の捜査では追跡が難しい場合に活用している。裁判所の令状がなくても違法性があるとは思っていない」と話す。この問題は民事裁判でも問われている。名古屋市の男性が昨年、愛知県警に無断でGPS端末を車両に付けられプライバシーを侵害されたとして県に賠償を求めて提訴し、名古屋地裁で係争中だ。

 携帯電話に備わっているGPS機能を捜査に利用しようとする動きもある。総務省は今月にも、通信事業者向けの指針を見直し、裁判所の令状があれば本人への通知なしで捜査に利用することを可能にしようとしている。

 こうした流れに対し刑事訴訟法の専門家からは、歯止めを求める声が出ている。

 米国では、連邦最高裁が12年、警察が車にGPS発信器を長期間取り付けていたことに対し、令状なしの情報取得は憲法違反と判断。州レベルでGPSの捜査利用に関する立法措置をとるところも出ている。【長谷川豊、青島顕】